私の木材人生は福岡県博多の銘木市場から始まりました。
今から37年前のことです。
日本各地のみならず世界中から入荷する銘木を検品して送り出す毎日でした。
ある時、見たこともない風合いの木が入荷しました。それは、まさに「風合い」としか表現できない佇まいの木でした。色は落ち着いたベージュで、両端に黒いテープが巻かれていました。
その例えようのない存在感は、まるでその一画だけが独特のオーラに包まれているようでした。おそるおそる触れてみるとしっとりとした手触りから微かなぬくもりが伝わってきました。
それが百年木材との出会いでした。
無知な私にも「これは特別な木材なのだ」と理解できました。
何千本の木材が束になっても敵わない存在、今まで見た事のない独特の風合いに魅了されました。
「百年育つと木は別物になるんだよ」
と先輩が教えてくれました。
「いつか百年木材を扱える材木屋になろう!」
しかし時代は百年木材を必要としない方向へ流れました。
歳を重ねるにつれて、あの時の
「百年木材を扱える材木屋になろう」という誓いを思い出すようになりました。
その思いは、少しずつ大きくなり、いつしか実現しなくてはならない事として私の中に育ちました。